忘れられないビジネスホテル

青春なんとか切符が青春中の人でなくても使えるのと同じだ。
あるときビジネスホテルに泊まった。
しかも家族で。
数あるホテルライフの中で5本指に入るほど思い出深いホテルだった。
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そのホテルになぜ泊まったのかは思い出せない。
用事があったのだろう。
とにかく一番安いホテルをと必死で探したのを覚えている。
見つけたのは全国チェーンのそのビジネスホテルだった。
ホテルの小さなフロントにはかわいいカゴがあって女性客向けに無料でパックなどのスキンケアが入ってあった。
もちろんもらった。
こうして女性の集客をねらっているのだ。
部屋は狭いが夜寝るだけの目的なので十分であった。
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そのホテルのなにが忘れられないかというと、無料の朝食である。
驚きの破格であるというのに。
朝食までついているのだ。
ビルがひしめきあうように立っている都会の真ん中にあるビジネスホテル。
ホテルと言ってもオークラのようなホテルとはかなり異なる。
でもランクは違ってもホテルはホテルだ。
スタッフたちの気持ちは同じであろう。
荷物預かりのサービスだってあるにちがいない。
どんな朝食なのか期待でいっぱいだった。
期待のビジネスホテルの朝食
どこで朝食なのかと思いきやそう広くもないホテルのロビーの家具の配置を変え、いつのまにかテーブルがいくつか並べられていた。せまい空間を非常にうまく工夫し、パンやヨーグルト、コーヒーなどが並べられていた。
簡単ではあるが結構種類があった。
宿泊客でいっぱいだった。
そのアイディアに感心した。
レストランも厨房もない狭いホテルで朝食をどうやって提供するかいろいろ考えたにちがいない。
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そもそも朝食は簡単でいいのだ。
もしこのホテルで朝食がなければ、近くの喫茶店でモーニングを食べるか、コンビニでパンでも買って部屋で食べるだろう。
それがホテルのロビーに降りてくると用意がされている。
暖かいコーヒーも紅茶もある。
狭いホテルの部屋で食べるよりずっと気持ちがいいはずである。
ロビーはガラス張りで日が差し込み明るかった。
客は男性が多かったがそのほとんどがスーツ姿である。
スタッフの姿は見えない。
並べてあるだけなのだ。
低コストをキープするためにスタッフは最低限の人数なのだろう。
コーヒーなども機械がいれるので、ウェイトレスは必要ない。
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こんな簡単なことだが初めて経験したのでそのアイディアに驚いた。
だから忘れられないホテルになっている。